2021年12月21日 <開催報告>第一回 とちぎ江戸料理実食会 かな半

11月25日(木)、かな半旅館で、小江戸とちぎのもてなしグルメ「とちぎ江戸料理」の実食会を開催しました。この会は、とちぎ江戸料理の魅力向上のために企画したもので、今回が一回目。とちぎ江戸料理提供店や観光関係者、メディア関係者等が集まり、新メニュー「本膳 かな半料理帖」について意見交換を行いました。

IMG_6979

2016年度のとちぎ江戸料理提供開始時より、かな半は、染飯や鳥の濃漿といった定番の江戸料理から、江戸期の調味料・煎り酒で食べる刺身や、郷土食材のモロを使った料理等、バラエティ豊かな江戸御膳で人気を博してきましたが、今回披露されたメニューは、江戸期のかな半の献立記録から再現・アレンジしたもの。当時主流だった本膳スタイル(※)を取り入れました。

im_dishes_dinner04
(※)本膳スタイルとは、日本のもてなし料理の原型と言われるもの。一汁三菜を基本とし、会席料理とは違って一つひとつの膳に料理を載せて出すのが特徴。テーブル提供に合わせて折敷を使用している。

かな半志鳥家に残っていた台帳や料理献立は、現在、宇都宮市にある栃木県立文書館に貴重な資料として保管されています。今回の「本膳 かな半料理帖」のメニューづくりは、この古文書を読み解くことから始まりました。

小江戸のもてなし-A

「随分前からやりたいと思っていたのですが、ぜんぜん読めなくて…何年も温めていたような状態でした(笑)。半ば諦めていたのですが、とちぎ江戸料理プロジェクトをきっかけにもう一度やってみようと思いました。今日披露することができたのは、ご協力いただいた市の学芸員さんや郷土史家の関口利枝先生、とちぎ江戸料理アドバイザーの冬木れい先生のおかげです」と女将の志鳥泰子さん。

献立
本膳
一、 飯 きのこ御飯
一、 汁 鳥の濃漿
一、 香の物
一、 なます 大根、人参、鮭、長芋
一、 坪 煮物 〜木耳、さや、生麩、干瓢、湯葉〜

二の膳
一、 焼き物 鯛の田楽
一、 猪口 豆腐ぬた

大皿(三の膳)
一、 平 煮物 〜凍み蒟蒻、酢蓮、あわび、鴨、玉子焼き〜

菓子
一、 水菓子 羊羹
一、 抹茶

専門家の協力があったとはいえ、献立を再現するのは容易いことではありません。古文書の献立には、なます、平(ひら、煮物)、焼き物といった料理の名前と、食材名のみ。今のようなレシピがあるわけではないため、当時の料理や調理についての知識をもとに想像力を膨らませ、一つずつ形にしていかなければなりません。まずは、当時どんな素材が使われていたのかを知るために、100枚にもわたる献立表から材料名をすべて書き出すことから始めたと言います。

また、かな半が大切にしたのは、単に献立を復元するのではなく、今食べておいしいものを作りたいということ。例えば、今回好評だった豆腐ぬたは、当時のぬた衣は酒粕に塩を加えただけのものだったそうですが、酒粕に白味噌、甘酢も加えるなど、当時の味わいを残しながら、現代の味覚に合うように工夫されています。

IMG_6993

参加者からは「見た目や味が上品。すごく美味しかった」「よくぞここまで完成させることができた。素晴らしい」「蔵から出てきた大皿が美しかった」「ツアー客のニーズはあると思う」など好評が寄せられる一方で、「地元食材の使用や栃木市の名勝や歴史を踏まえるなど、一つひとつの料理にもストーリー性を持たせるといいのでは」といった意見など、さらなる向上にむけた課題も見つかりました。

ともに活動しているとちぎ江戸料理提供店からは、「いつも江戸料理を勉強されていて刺激になる」「各店の取り組みをプロジェクトとしてどう活かして、どう盛り上げていくかが大切」などの感想が寄せられました。

様々な分野のプロフェッショナルの意見が出て、市の観光PRを考える上で大変有意義な会になったと思います。また、今回のかな半の取り組みは、食を通じて小江戸とちぎの歴史を掘り起こすことにもつながると感じました。とちぎ江戸料理は、食を通じて街の歴史を知る一つの手がかりであり、市民にとっても財産だと思います。

第二回は来年2月を予定しており、会場は参加店と協議中。開催はコロナ状況を鑑み、本サイトで告知しますので、市民の方もふるってご参加ください。

IMG_6003
料理が提供される前、熱心にお品書きを読む参加者。当時の献立の写真が印刷され、簡単な料理説明も。こうした演出も好評だった。

IMG_6981
栃木市出身の料理研究家で、とちぎ江戸料理アドバイザーの冬木れい先生。江戸料理について解説いただいた。また、店の個性を引き立てるメニュー作りをサポートしていただいている。

IMG_7002
料理は、本膳、二の膳、大皿(三の膳)、菓子の全10品。色鮮やかな大皿は、かな半の蔵から出てきたもの。

IMG_6976
古文書から書き出した当時よく使われていた食材、木耳や凍み蒟蒻を使った料理も今に蘇った。

IMG_6007
とちぎ江戸料理提供店のメンバー。料理の説明や感想を細かくメモする姿が印象的。刺激され、自店の料理アイディアにつながるという。

小江戸のもてなし-B1_23A3940のコピー
かな半 女将の志鳥泰子さん

かな半旅館
栃木市万町5-2 TEL : 0282-22-0108
【営業時間】11:30~14:00 【定休日】月曜日・第1火曜日・年末年始
http://www.kanahan-ryokan.jp

本膳 かな半料理帖
昼3,750円(税込)、夜4,510円(税込)
※ 予約は2名様以上、4日前までに申し込みのこと。